自分の足元を大切にしたい。
映画『ダゲール街の人々』に映っていたのは、小さな通りで日々を営む人たち。肉屋、パン屋、美容院、香水店。それぞれが自分の居場所を持ち、自分のリズムで暮らしている。
SNSを開けば、誰かの成功や華やかな暮らしが流れてくる時代。つい”隣の芝生”ばかり見てしまうけれど、本当は”自分の芝生”を丁寧に手入れすることこそが、豊かさなのかもしれない。
アニエス・ヴァルダの優しい視線を通して、「小さな世界を愛しながら生きること」の魅力について、改めて考えてみた。
『ダゲール街の人々』とは、どんな映画?
1975年に公開された映画、アニエス・ヴァルダ(Agnès VARDA)監督の『ダゲール街の人々』(原題 Daguerréotypes)
パリ14区、モンパルナス地区にある下町 ‘ダゲール通り’ のささやかな日常風景が切り取られたドキュメンタリー映画。監督自らこの通りに住み、スタジオを構えていたほどお気に入りの活動拠点。

遠くの成功より、”自分の芝生”を育てる人たち
‘ダゲール通り’に連なる商店で展開されるそれぞれの人生。
地方の小さな村出身の方々が多く、様々な出会いと経緯で辿り着いたパリ。彼らの生活は決して華やかではなく、とても素朴。
だけれども、それぞれがささやかな幸せを大切に感じ、身近な人を想いあって生きている様がとても幸せそう。彼らの心からの笑顔が、心に鮮烈な印象を残している。
自分自身の選んだ道を歩むこと、お役目を全うする姿からは充実感さえ感じる。
ひっそりとした暮らしだけれども、生活に埋もれた小さな宝物を見つけて楽しんでいる、その力みのない軽やかさにも魅力を感じる。
そんなささやかな生活をそっと包み込むことができる社会。その余白の部分にもグッと引き込まれる。

小さな世界を丁寧に生きることは、退屈じゃない
多くの情報を取り入れ過ぎてしまう傾向にある今日。人と比べて自分は…と落ち込んでみたり。
更には効率・スピードが重視され、自分を見失いがちな私たち現代人からは、彼らのゆったりとした生活リズムや、人間らしい地に足のついた生き方が輝いてみえる。
自分のリズムを取り戻すために、少しスピードを落としたい。浅くなった呼吸に気づいて、ふう。。っと息を吐いてみる。肩の力が抜けて軽さが出てきたら、改めて心の声を聞いてみる。そんな小さな一歩から、”自分の芝生”を育ててみるのはどうだろう?

大きな成功だけが、人生を豊かにするわけじゃない。毎日通る道、好きなお店、繰り返し淹れるコーヒー。そんな”小さな半径”の中にも、ちゃんと人生は宿っている。
『ダゲール街の人々』を観ながら、”自分の芝生”を手入れしていきたいと思った。
好きなものを好きと言えること。
静かな時間をもつこと。
心が惹かれる風景を記録していくこと。
それらはきっと、誰かと比べるためではなく
自分の暮らしを、自分で愛していくためなのだと思う。

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