パリの暮らしに憧れる人へ | 映画「パリ・ジュテーム」が教えてくれた日常の美しさ

フランス旅と文化のコラム

パリに憧れているけれど、それはどこか現実とは遠いものに感じてしまう。雑誌やSNSで見るパリは、どこか特別で洗練されていて、手が届かないもののように見える。

そんなイメージをそっとほどいてくれたのが、映画「パリ・ジュテーム」。観光地ではない、誰かの日常。何気ないカフェ、すれ違う人、ふとした優しさ。そのひとつひとつに、”パリらしさ”が静かに息づいているのを感じます。

この記事では、映画を通して気づいた”日常の中にあるフランスらしさ”について綴っています。

映画「パリ・ジュテーム」とは

「パリ・ジュテーム」は、パリの18の地区を舞台にした短編オムニバス映画。それぞれの物語は数分と短いながら、恋愛、孤独、出会いなど、様々な”愛の形”が描かれています。

華やかなストーリーではなく、どこにでもありそうな日常の一瞬。だからこそ、観ているうちにまるで自分もパリの街を歩いているような感覚に。

観光じゃない「パリ」がそこにあった

この映画に出てくるのは、いわゆる”観光地のパリ”ではない。整えられた美しさではなく、少し雑でリアルで生活の匂いがするパリ。

カフェでぼんやり過ごす時間や、何気ない会話、すれ違う人たち。そういう一瞬一瞬が、とても自然で印象的。

「パリってこういうところなんだ・・」そのイメージを受け取れたのは、きっとこの”飾られていない空気感”のおかげ。

日本人が思い描く「パリのイメージ」

Hotel de ville (オテル ド ヴィル) 駅を降りるとパリ市庁舎とその広場が広がる。2024年パリオリンピックの装飾がされているというので一目観に立ち寄った。

実物を目にして、歴史的建造物とのコラボレーションのあまりのカッコよさに心をつかまれ見惚れてしまう。

気付けば何枚も写真や動画を撮る周りの人たちと共感している。やっぱりここは芸術の都、パリ。

Hotel de ville オテルドヴィルのパリ市庁舎

さかのぼること数か月前、パリ行きが決まると同僚からの一言で必ず耳にする言葉「おフランス」。

この「おフランス」という言葉には、優雅でオシャレな国、ファッショナブルな雰囲気など、少々 ‘ 夢の国 ‘ 的な要素が感じられるのを否めない。実際その側面は大いにあるのだから無理もない。

そんな夢見心地な同僚の妄想を壊さないよう苦笑いしながらも、決して 「おフランス」を否定しないでおこう。

私の初めてのパリもそんな ‘夢の国’ 的なイメージを日本でたっぷりと入手してのものだった。

実際、パリのイルミネーションはまるで宝石のようだったし、シャンゼリゼ通りのカフェで過ごす人々は輝いていて、思わずあの名曲『オーシャンゼリゼ ♪』を口ずさみそうになった。

エッフェル塔や凱旋門を目の前にすると感動で心が震えた。

イメージの中のパリと、現実のパリ

しかし、そんな観光地を通り過ぎ、普段の暮らしを垣間見ると、私たちと変わらない生活模様。

パリに短期アパートを借りて’暮らすように旅する’を体験したときのこと。エレベーターのない3階にある部屋。木製の階段は今にも壊れそう・・・。朝7時過ぎにはギシギシと階段を下りる音が聞こえてくる。

パリのメトロはもっと現実へ引き戻される。通勤時間帯はやはり混んでいるし、なんといっても慣れないうちは鼻がひん曲がりそうになるほど独特の匂いが・・・。さらに落ち着かない壁の落書き。「おフランス」とは程遠い。

これらのギャップとフランス人の自己主張の強さに、パリへ憧れをもってやって来た日本人が精神的にやられてしまい『パリ症候群』という本まで出版された。

パリの過剰なイメージばかりが先行して、後でがっかりされるのは残念過ぎる!

パリは非日常の夢を味わうアトラクション的な魅力を大部分の観光客に魅せてくれるけれど、その反面、現実の生活をつい忘れさせてしまいがち。

そんなパリ各区域で巻き起こる夢と現実をユーモアとシリアスさを交えて垣間見せてくれる映画『パリ ジュテーム (Paris je t’aime) 』は、パリ旅行の予習としてお勧め。

私個人的には、劇中の14区、アレキサンダー・ペイン監督の作品が心に沁みた。異国の地パリに来て孤独を感じるも、パリを愛し始めていることに気付く主人公は、まるで自分を見ているかのように感じて思わず映画館で涙した。

地区によって変わるパリの景色も見どころ。それぞれの物語から、パリを客観的に観させてくれる。

パリも私たちと同じように、普段の生活の中で様々な人生が繰り広げられている、ということを頭の片隅に置いておくことは’おフランス’な夢見心地さを残したまま、パリ旅行を味わうことに有効かもしれない。

こんな人におすすめ

□パリの暮らしに憧れている人
□フランスの空気感が好きな人
□日常を大切にしたいと思っている人

派手な展開はないけれど、観終わったあとに少しだけパリへの見方が変わる、そんな作品です。

特別なことがなくても、日常の中に美しさはある。「パリ・ジュテーム」は、それを静かに教えてくれる映画でした。

コメント